アイロンとは? 英語:Electric iron
アイロンは英語で、ironすなわち鉄のことです。衣類のしわを伸ばすには、鉄の重さと熱容量が必要です。アイロンの歴史は古く、紀元前2000年以前という説もあります。
日本では平安時代に「火熨斗」(丸い銅の器に炭火を入れたもの)が使われ、また江戸時代には、炭火で焼いて使う焼きゴテが登場しました。コテは火熨斗では処理できない衣類の仕上げやしわ伸ばしなど、細かく狭いところに使いました。
電気アイロンは、1955(昭和三十)年ごろから急速に普及し、1965年ごろには、早くも普及率90%を超えて成熟商品となりました。
電気アイロンの歴史
アイロンの起源は古く、8世紀ごろには既に衣類のシワのばしや、折り目をつける道具として利用されていた。電気式アイロンは20世紀になってから普及し発展してきた。
電気アイロンは、電熱線に電流を流すことにより発生する熱を利用します。1882(明治十五)年アメリカのニューヨーク州に住むヘンリー・W・シーリーが、世界ではじめて電気アイロンの特許を取得しました(下図)。このとき、まだ家庭には電気が供給されておらず、このアイロンにはプラグも電源コンセントもありませんでした。図をみると、分岐したコード線のワイヤーをピンの孔に差し込みねじで固定しています。
その後、1910年ごろに電気アイロンはアメリカで本格的に実用化され、1914(大正三)年日本に輸入されました。当時のアイロンはサーモスタット(温度調整機構)がなく、指先をぬらして底面に触れて温度を判断していました。また、衣類を焦げつかせることもあるため、必ず布地とアイロンの間に手ぬぐいなどの別の布をあてていました。これを「あて布」といいます。
1915(大正四)年、芝浦製作所(現・東芝)がわが国ではじめて電気アイロンを発売しました(下図)。そのころは電気熨斗といいました。アイロンの容量は、輸入品に合わせて重さ(1ポンド一約450グラム)で表現されていました。4ポンド(300ワット)が約十円でした。小学校の先生の初任給が五十円でしたので、いまなら四~五万円です。
1954(昭和二十九)年、松下がスチームアイロンを発売しました。その後、ベースをフッ素樹脂加工したアイロンを発売し、衣類の焦げつきをなくしました。
1978年、ドイツのケルンショーでロウェンタがカセット式スチームアイロンを発表しました。わが国のメーカーも急いで開発に着手し、1979年には、透明で水量がひと目でわかるカセット式スチームアイロンを発売しました。その後コードリール付きアイロン、マイコンアイロンと続きました。
1985年ごろ、アメリカでコードレスアイロンが発売されました。1988年、わが国でもコードレスアイロンが開発され、現在では主流となっています。
最近ではアイロンを使用したデンマーク発祥の玩具 「アイロンビーズ」が女性に人気である。「アイロンビーズ」は直径8mm程度のパイプ状のビーズを専用プレートの上でならべて平面的な絵柄を作り、アイロンなどの熱で溶かして接着し、モチーフを作る。
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電気アイロンの種類、原理、しくみ
ドライアイロンのしくみ、構造
スチーム発生装置のないアイロンを通常「アイロン」、または「ドライアイロン」と呼びます。自動温度調節器付きのドライアイロンを別名「自動アイロン」と呼ばれ、いまも愛用されています。
その構造は、下図に示すように基本はアルミニウム合金のベースに発熱用のシースピークが埋め込まれ、つまみで温度調整できるようにサーモスタットが付いています。また、図示していませんが、異常温度上昇に備えて電源を切る安全装置(リミッターまたは温度ヒューズ)が組み込まれています。
アイロンは通常、電源(スイッチ)を入れるとヒーターに通電され、下図のようにベースの温度が上昇し、サーモスタットの働きで設定温度(中央値)を少しオーバーした上限温度に達すると通電しなくなります。するとベースの温度が下がり、下限温度(+α)で下がると再び通電し、ベースは上限温度(+α)をめざします。このようにサーモスタットの働きで、ベースは一定の温度を保つのです。
アイロンがけがはじまると、衣類に温度を奪われたベースは通常以下に温度が下がり、アイロンがけをやめるとベースの温度は再び上限温度(+α)に達するのです。
スチームアイロンのしくみ、構造
現在の市場は、大部分がスチームアイロンであり、自動アイロンは数%にすぎません。主力であるスチームアイロンの構造は、本体に水タンクが固定されたタイプと、給水時に水タンクが外せるカセットタイプがあります。本体に固定されたタンクの場合、水の供給は付属のカップを用います。
カセットタイプは、上から見ると馬蹄形(U字型)の水タンクを本体から外して水道の蛇口まで持っていくことができるので便利です。
スチームアイロンの構造を、下図で説明します。
スチームアイロンは、スチームボタンを引くと水タンクからスチーム発生部に水が供給され、それが加熱されてスチーム吐出口から吹き出します。
アイロンベースが十分熱くなってからスチーム発生部に水が入るように、給水部分はバイメタルで弁の開閉が行われます。 低温時はバイメタル上部の弁が閉じ、水がスチーム発生部に入れません。アイロンベースが十分加熱されるとバイメタルが湾曲し、上部の弁を開いてタンクの水がスチーム発生部に入ります。
スチームアイロンは、衣服のシワ仲伸ばしを効率良く行うために、ペース部の穴からスチーム(蒸気)を発生させます。水を使うためには、安全のために完全に絶縁しなければなりません。そこで、考えられたのがシーズヒーターです。これは、金属パイプの中に、絶縁体(酸化マグネシウムの粉末)で覆ったコイル状の電熱線を入れた構造[下図]。スイッチを入れると、このシーズヒー夕―が加熱されて、熱がベース部に広がる構造になっています。電気ジャーポットなども、このシーズヒーターを使っています。
コードレスアイロンの仕組み、構造
ワイシャツをアイロンがけする場合、襟、袖口、肩などからかけ、袖を伸ばしてかけて全体を広げて身ごろの前・後に移ります。
動作のたびにアイロン本体を台に戻し、両手で衣類を広げたり裏返したりと何度も場所を変えます。このときコード付きのアイロンですと、コードが動作を妨げることがあります。
初期のコードレスアイロンはタテ置き型でしたが、給電台に置きにくいため、20~30度の傾斜置き型が開発され主流となっています。
コードレスアイロンは、給電台に置くと後部の端子棒が穴に挿入され、内部の板ばね上の端子板に圧接する構造です(下図)。したがって、接触すると同時にすぐ給電をはじめ、ベースの中に埋め込まれたヒーターが加熱され、ベースに熱エネルギーが蓄積されます。通常は、低温なら約50秒、中温なら約70秒、高温なら約90秒でアイロンがけができます。アイロンがけの持続時間は、約120~150秒です。
実際のアイロンがけをする時間は思ったより短く、熱容量がまだ残っているうちに次の給電を行うことになります。すなわち、給電⇒アイロンがけ⇒給電⇒アイロンがけを繰り返します。
ハンガースチーマー、衣服スチーマーの仕組み、構造
ハンガースチーマー、衣服スチーマーはハンガーに掛けられた衣服に、アイロン面を軽く当てるだけで、スチームによりシワ取りや脱臭を行えるタイプです。
高温の蒸気で、衣類をハンガーに吊るしたままシワを伸ばすことができるため、アイロンをかける時に必要なアイロン台はいらない。
日本工業規格JIS C9203 電気アイロン
解説概要:英語:Electric irons
この規格は,家庭用,その他これに類する目的のための定格電圧が 250V 以下の電気ドライアイロン及び電気スチームアイロン(以下,アイロンという。)について規定する。また、5L 以下の容量の独立した水タンク、又はボイラをもつものも含む。
その他の詳細は下記のサイトを参考にして下さい。
JISC日本工業標準調査会サイト
電気アイロンの日本工業規格はJIS C9203です。JISC日本工業標準調査会サイト内のJIS検索から内容が閲覧可能です。(但し印刷不可)
*現在はIEインターネット エクスプローラーのみ閲覧可。
kikakurui.com |JIS規格票をHTML化したサイト
電気アイロンの日本工業規格 JIS C9203が全文、閲覧、印刷可能です。(但し図、イラスト含まず